お子さんの耳鼻科の病気
当院では、耳鼻咽喉科の他に小児耳鼻咽喉科も標榜しています。
耳鼻咽喉科の病気の中には、お子さんがかかりやすい病気も多いです。
院長自身も2児の父で、子供が園に通いだしたころは、よく風邪をひいて、頻繁に鼻をぐずぐずさせ苦労したのを覚えています。
お子さんの事で、心配されている親御さんも多いと思います。
耳鼻咽喉科医として、これまでの診療の際に頂いた親御さんからのご質問も含めて、少しでもわかりやすいように、特にお子さんがかかりやすい耳鼻咽喉科の病気についてまとめてみました。
よくご質問を頂くことに関してはQ&A形式でまとめています。
耳あか
当院では耳掃除希望の患者さんにも対応しています。可能な範囲で除去させていただきますが、なるべく、お子さんの場合はトラウマを作らないように、また無理な処置をして耳の中を傷つけないように、状況に応じて対応させていただきます。場合によっては、耳あかをふやかすお薬で柔らかくして除去することもあります。お子さんの場合、一度ですべての耳あかの除去が困難なケースもありますが、ご了承ください。
お子さんの耳あか Q&A
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自宅でお子さんの耳掃除はどのようにすればよいですか?
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お風呂あがりなどの耳あかがふやけたタイミングで1回/週程度での綿棒での掃除をおすすめしています。自宅で耳あかがとれない場合は、クリニックを受診して頂けたらと思います。
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学校検診で耳垢栓塞(じこうせんそく)の指摘がありました。耳垢栓塞とは何ですか?
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耳あかが外耳道を塞いでしまう状態を耳垢栓塞(じこうせんそく)と言います。
耳垢栓塞となってしまった場合、自宅での耳掃除では対応は難しく、病院での掃除が必要となります。耳垢栓塞を認めた場合は、顕微鏡等で確認しながら慎重に耳掃除をさせていただきます。可能な範囲で受診当日に掃除をさせていただきますが、耳あかが硬い場合には無理な処置はせず、耳あかをふやかす水薬(点耳薬)を処方し、耳あかを柔らかくしてから何度かにわけて耳掃除をさせて頂くことがあります。その場合は、複数回通院していただく可能性もありますが、ご了承ください。
中耳炎
特殊な中耳炎もありますが、お子さんに特に多いのは、中耳に細菌が感染して起こる急性中耳炎と中耳に水が溜まる滲出性中耳炎です。近年では、予防接種の普及により、以前より中耳炎は少なくなっていますが、現在でも繰り返し中耳炎を起こし治療に難渋するケースも多いです。
お子さんの中耳炎 Q&A
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お子さんはなぜ中耳炎を起こしやすく、繰り返しやすいのでしょうか?
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中耳は、鼓膜の奥にありますが、耳管という管で鼻とつながっています。
大人になると耳管は細長くなりますが、お子さんの耳管は太くて短いといわれています。耳管が太くて短いため、鼻の細菌が耳に入りやすい状態です。
また、未就学児は、細菌やウイルスから体を守る免疫力が弱いことや集団保育などで、風邪や細菌感染を起こしやすいことも、中耳炎を繰り返しやすい要因となります。10歳頃になると耳管は発達し、中耳炎を起こしにくくなります。
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急性中耳炎と滲出性中耳炎の違いは
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急性中耳炎は、鼻などの細菌が中耳に入り、細菌が中耳で繁殖し炎症を起こすことにより生じます。一般的に痛みを伴う中耳炎です。それに対し、滲出性中耳炎は、中耳に液体が溜まる状態で痛みは伴いませんが、聞こえにくさや耳閉感を生じます。滲出性中耳炎は急性中耳炎の治りかけの時や鼻の調子が悪く耳管の出口が狭いときなどに生じやすいといわれています。
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急性中耳炎、滲出性中耳炎の治療は?
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急性中耳炎では、軽症であれば抗生剤を使用しない場合もありますが、中等症~重症の場合は抗生剤治療を行います。鼻の調子が悪いときに生じやすいので、鼻の治療も行います。(特に、2歳未満では免疫力が弱いため、重症化を避けるため抗生剤使用が望ましいといわれています。)
滲出性中耳炎では、痰を出すお薬(去痰薬)で治癒することがあるといわれています。また、鼻炎を起こしていたり、アデノイドという耳管の出口付近にある扁桃腺が大きい場合は、滲出性中耳炎の原因となるため、点鼻薬(鼻噴霧ステロイド薬)や鼻炎の薬を併用する事で改善することがあります。
お子さんの滲出性中耳炎は通常3ヵ月以内に治る場合は、薬での治療で様子を診ますが、3ヵ月以上の長期間にわたり滲出性中耳炎が続く場合は、鼓膜チューブ留置(鼓膜を切開し、しばらくの間排泄路を作るためチューブを留置する)が必要な場合があります。
鼻水、鼻づまり
お子さんの場合は、園や学校などで感染症が流行している時期には感染症ももらいやすく、
鼻の調子がすぐに悪くなるお子さんも多いです。
風邪のひき始めやアレルギー性鼻炎の時は、透明な鼻水(水様性鼻汁)が出ることが多いですが、風邪をこじらせると、黄色や白っぽい鼻水にかわります。特に色のついた鼻水が長く続くときは、副鼻腔炎(蓄膿症)に移行していることも多くしっかりとした治療が必要です。
中耳炎の説明でも記載しましたが、耳と鼻は耳管という管でつながっており、長期間に渡り鼻の調子が悪いと中耳炎のリスクにもなります。
クリニックでは、透明な鼻水の場合も色のついた鼻水の場合も、状況に応じてお薬の処方をさせていただく他に、鼻の吸引をしてその時点で溜まっている鼻水を吸引したり、鼻の炎症を抑える薬を吸入していただくネブライザー治療が可能です。
鼻水、鼻づまり Q&A
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お子さんがよく風邪をひくと鼻をずるずるしています。自宅での鼻吸い器の使用はどうでしょうか?
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特に、お子さんがご自身で鼻をかむことが可能になるまでは、自宅での鼻水の吸引器は非常に便利だと考えています。鼻水の吸引器には、親御さんが器具を吸って吸引を行うタイプと電動タイプがあります。どちらのタイプでも、鼻をご自身でかむことが難しいお子さんには有用だと考えますが、前者は比較的安価なところが利点で、後者は操作が簡便なことが利点と考えています。院長も、子供が鼻をかめるようになるまでは、電動の吸引器を購入し使用していました。自宅でも鼻の調子がわるい場合は使用して頂くと良いと考えていますが、自宅での吸引は怖いと抵抗がある親御さんもおられるかとは思います。もちろん、クリニックでもしっかり対応可能ですので、鼻の調子が悪い際にはご相談ください。
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お子さんがよく透明の鼻水をだしています。風邪でしょうか?それともアレルギー性鼻炎でしょうか?
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お子さんは風邪などの感染症も繰り返しやすく判断は難しいですが、風邪の場合は、1週間程度で症状が軽快することが多く、アレルギーの場合は、アレルゲンの暴露が続くと透明な鼻水が長期間続く事が多いです。また、アレルギーの場合は、特定の季節に毎年調子が悪くなったり、例えば特定の場所に行ったときにいつも悪くなったりします。
鼻を診させて頂くだけで、すぐに風邪なのかアレルギーなのかを見極めることは難しいですが、これまでの経過も含めて、アレルギーの可能性について考慮します。実際にアレルギーがあるかどうかに関しては、血液検査で主要項目のアレルゲンは測定できます。当院ではお子さんでも比較的検査を受けて頂きやすいドロップスクリーン検査もとりいれていますので、ご希望の場合は相談してください。
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お子さんの副鼻腔炎の診断はどのように行いますか?
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副鼻腔炎は大人の方からお子さんまで幅広い年代で起こる病気です。大人の方の副鼻腔炎の評価としては、一番精密な検査はCT検査となりますが、お子さんの場合は被爆に対する検査のハードルは大人より高くなります。
また、大人と比べてお子さんの場合は、副鼻腔が発達途中の事が多く、特に6歳以下のお子さんでは、副鼻腔炎に対する画像評価のメリットは少ないといわれています。お子さんと一言に言っても、年齢、症状、経過にもよりますが、明らかな色のついた鼻水が継続している場合は、副鼻腔炎として治療をさせて頂くことが多いです。
お子さんの場合でも、鼻の内視鏡検査は副鼻腔炎の評価には有用とは言われています。
扁桃肥大
扁桃は免疫に関する臓器で、外から侵入してきた異物に対応するため、のどには円形に分布しているといわれています。特に大きな扁桃として代表的なものは、口蓋扁桃(俗にいう口をあけたらみえる”扁桃腺“)と鼻のつきあたり、のどの上にあるアデノイド(咽頭扁桃)があります。
一般的に、アデノイドの大きさは5歳頃が最大となり、大人になるにつれて退縮していきます。口蓋扁桃は7-8歳頃に最大となることが多いです。
扁桃腺に関しては、よく小児科のかかりつけの先生からご指摘を頂いたり、学校検診で指摘されて、ご相談を頂くことが多いです。
お子さんの扁桃肥大 Q&A
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扁桃腺が大きいと治療が必要でしょうか?
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単純に扁桃が大きいだけでは治療対象にはなりませんが、特に、扁桃肥大で問題になることは、睡眠時無呼吸症候群や滲出性中耳炎を生じやすいことです。扁桃肥大を指摘されているお子さんで、夜寝ている時に息がとまることがあったり、胸が大きく凹むようなしんどそうな呼吸をしている場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。当院でも評価は可能ですので、是非ご相談を頂けたらと思います。(睡眠時無呼吸症候群のページにお子さんのこともまとめていますので、ご参照ください)
鼻出血
鼻の粘膜が何らかの原因で傷ついた際に鼻出血を生じます。
特に、鼻中隔という左右の鼻を仕切る壁には、キーゼルバッハ部位という鼻の毛細血管が集まる部位があり、血流が豊富です。キーゼルバッハ部位が傷つくことによって生じる鼻出血が最も多いといわれています。
お子さんの鼻出血 Q&A
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自宅で鼻出血がでた場合、初期対応としてどのように対応するのが良いですか?
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鼻出血を生じた場合は、まず、鼻翼という鼻の下の方の柔らかい部分をしっかりとおさえます。(鼻の上方には鼻骨という骨があり、骨の触れる部分を抑えても圧迫効果はあまりありません)
ベッドに寝て安静にしたり上をむいたりする方がおられますが、そうすると血液が喉の方に流れ込んでしまい、なかなか鼻出血は止まりません。
鼻出血の正しい圧迫止血法は、イラストのように、椅子に座って、若干下を向く態勢が良い対応となります。
しばらくおさえることにより止血が得られた場合は、一旦様子をみていただいてもよいと思いますが、なかなか止まらない場合は、病院を受診して頂けたらと思います。
お子さんの飲み薬について
これは耳鼻咽喉科の病気というわけではないですが、お子さんの薬の事でよくご質問を頂くことが、「1日3回の薬をもらったが、園ではなかなか昼にお薬を飲むのは難しい」というご相談です。1日3回内服するお薬の場合、朝、昼、夕と本来内服をして頂くことが多いですが、耳鼻科でよく処方するお薬では、昼の内服が難しい場合、朝、園からの帰宅直後、寝る前の1日3回の内服でも対応可能なケースは多いです。(一部の薬では食事の影響がある薬もありますので、特に気を付けてほしいお薬を処方させていただく際には説明させていただきます)また、内服方法にお悩みの際はご相談ください。